Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「炻器におけるいくつかの彫刻的表現」について
「中空の彫刻」(廣田治子著 三元社)の「第二部 ゴーギャンの立体作品」の中の「第4章 陶製彫刻と木彫浮彫(1889年と1890年)」の「4 炻器におけるいくつかの彫刻的表現」をまとめます。ここではゴーギャンと同様に陶器と彫刻の結合を推し進めたジャン・カリエスとの関係が語られています。「ゴーギャンが目指していた陶器と彫刻の結合という芸術概念は、カリエスにとって真の啓示であっただろう。こうしてカリエスは、『彫刻によって装飾された作品、頭部の付いた小樽、渋面の付いた手桶、浮彫で怪物が表された焼き物、あるいはそれ自体で怪物の頭部を形成している焼き物』を生み出すことになるのである。」そうした創作的陶器にはイメージの源泉となる自らの成育歴や宗教感などがあったようでした。「カリエスとゴーギャンの間には、まさしく己自身の階級意識の違いによる人間の社会に対する眼差しの違いがあったが、両者に共通して怪物的なるもの、人間と動物の間で揺れ動く存在に対する関心があったことは注目すべきである。魂の醜さが引き起こす肉体のメタモルフォーズというゴチック的な想念のもとに、カテドラルの樋嘴の怪物たちは二人の芸術家を等しく惹きつけていた。」西欧の街を歩いていると、教会の樋嘴に怪物たちの像が彫られていて、当時の私は不思議な興味に駆られて、その資料を集めたりしていました。魔除けのようなものなのかと思っていましたが、そのバリエーションが楽しくて、可愛い悪魔たちに見守られているように感じました。それを炻器という技法で作った二人の芸術家。日本でも馴染みのある炻器が、西洋でも新しい表現に使われていたことが私にはちょっと驚きでした。「二人の象徴主義の芸術家、すなわち人相学的色彩を帯びたレアリスムから出発したカリエスと、ロマン主義的感性をよりどころとしたゴーギャンはともに、それぞれのプリミティヴィスムの追求と人間の条件についての考察に応える素材であった炻器を用いて新しい彫刻のフォルムを創造した。」確かに炻器は素朴な風合いが出て、面白味のある素材だと私も思います。