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「ニューヨーク派の誕生」のまとめ
「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著 高橋洋訳 青土社)の「第1章 ニューヨーク派の誕生」をまとめます。本書は脳科学者の著した書籍ですが、第1章では現代美術がヨーロッパからアメリカに中心を移した経緯が書かれていました。ヨーロッパの戦禍を逃れてきた革新的な芸術家がアメリカで抽象表現主義を生み、前衛的な芸術家の流派としてニューヨーク派が誕生しました。「物体やイメージを、その豊かさをまるごととらえて描くのではなく、解体して、その一つ、もしくはせいぜい二、三の構成要素に焦点を絞り、新たな方法でそれらのコンポーネントを探究することで豊かさを見出そうとするようになったのである。」それを広報したのは3人の美術評論家でした。「モダニスト運動の影響は、ハロルド・ローゼンバーグやクレメント・グリーンバーグらの美術評論家が、その当時ニューヨークで活躍していたことで強められた。」それにコロンビア大学のマイヤー・シャピロを加えた3人がアメリカ絵画を海外向けに大々的に擁護したのでした。また、アメリカ政府の支援もありました。「人々が不況にあえいでいた当時、アメリカ政府は公的プロジェクトにアーティストを動員する連邦美術計画を実施し、多数のアーティストたちを支援したのだ。その結果、彼らは生涯を通じて広く交流し影響を及ぼし合うようになったのである。彼らが築いたネットワークは、科学者による対話的で生産的なネットワークに非常によく似ていた。」本書はまずアメリカによる現代美術隆盛の事情を説明しています。脳科学に入る前段階として、アメリカで興った多様な美術表現に触れることを解説したのは、本書の読者が科学者ばかりでなく、私のようにアートの世界から論考に触れていくことに配慮した結果かも知れず、いきなり科学的な難題を突きつけられることもなく、事情が分かっている現代美術としての価値転換をまず最初に持ってきたのだろうと思います。次の章ではアートの知覚に対する科学的アプローチが論じられているので、ここからが本題と思っています。次が楽しみです。