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「モンドリアンと具象イメージの大胆な還元」のまとめ
「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著 高橋洋訳 青土社)の「第6章 モンドリアンと具象イメージの大胆な還元」をまとめます。「初期の抽象画家のなかでもっとも急進的な還元主義者と言えるのは、純然たる線と色で絵を描いたオランダの画家ピエト・モンドリアンであろう。」モンドリアンはピカソやブラック等の進めた分析的キュビズムより造形的要素を見出し、木々のある風景から線による基本的フォルムへと切り詰めていきました。脳科学者たちは、脳の一次視覚皮質の各神経細胞が、単純な線や、垂直や水平、傾斜などの特定の向きをしたエッジに反応することを見出しています。「線の強調が、アーティストの幾何学に対する関心や知識に由来するわけではないことは間違いない。むしろ、セザンヌに倣って視覚世界の複雑なフォルムを基本要素に還元し、ルネサンスの画家が遠近法によって行なったのと同じように、フォルムの特質と、脳がフォルムを規定する際に用いているルールを推測しようとする彼らの努力に由来すると見るべきだろう。」モンドリアンの後期の絵画は、赤、黄、青という三原色に絞られた繰り返しとリズムによって、その後に登場するジャクソン・ポロックの絵の具を滴らせる絶え間ない動きと驚きの感覚に通じるものがあると本書は指摘しています。モンドリアン自身が綴ったアートにおける還元主義的アプローチの適用を宣言した一種のマニフェストを、最後に引用いたします。「私は、細心の注意を払って普遍的な美を表現するために、平面上に線と色のコンビネーションを構築する。自然(や自分が見ているもの)は、どんな画家にも言えることだが、私を特定の情動的な状態に置いて啓発し、何かを生み出したいという衝動を引き起こす。しかし私の望みは、真実にできる限り近づき、ものごとの根底(依然として外的な基盤の一つにすぎないのではあるが)に達するまで、そこからすべてを抽象することだ。」