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「具象から色の抽象へ」のまとめ
「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著 高橋洋訳 青土社)の「第9章 具象から色の抽象へ」をまとめます。本章では2人の画家が登場します。マーク・ロスコとモーリス・ルイスです。2人の作品に共通しているのは色彩による還元が成されているところです。「高度に単純化され、色彩の深さに焦点を置いた還元主義的な視覚言語と、ロスコがそれを用いて生み出した驚くべき多様さと美は、以後の生涯を通じて彼の作品を特徴づけることになる。ロスコは、その種の還元主義的アプローチを不可欠と考えていた。彼は次のように言う。『ますます私たちの社会は、環境のあらゆる側面を限られた関連づけで包囲するようになってきたが、それを破壊するために、事物の馴染みの側面を粉砕しなければならない』。彼の主張によれば、アーティストは色、抽象、還元を極限まで突き詰めることによってのみ、色やフォルムに対する慣例的な関連づけから鑑賞者を解放して、鑑賞者の脳に新たな思考、関連づけ、関係、そしてそれらに対する情動反応を生み出すイメージを創造することができるのである。」一方、ルイスの表現はこんなふうに書かれていました。「ルイスはアクリル絵具を希釈して、完成品ではない未延伸の大きなカンバスに直接注いだ。そうすることで絵具は自然に垂れ、カンバスの素材に直接染み込んだ。その結果、奥行きの錯覚は生じなくなり、色彩がカンバス表面の必須の構成要素になった。ブラシやスティックを用いずに絵具を垂れるままにまかせるこの技法は、アクション・ペインティングと大きく袂を分かつ。」まとめとして次の文章を引用いたします。「ともに抽象表現主義の分派であるアクション・ペインティングとカラーフィールド・ペインティングは、いずれもフォルムと色の分離を巧みに利用し、線と色を強調するために意図的にフォルムを放棄した。ポロックとデ・クーニングは柔和な外形とあいまいな輪郭を描くことで、脳の持つ限られた注意力をより強くパターンに向けられるようにした。ロスコ、ルイスらカラーフィールド画家は、色そのものを強調することで、さらにはっきりと注意力に焦点を合わせた。~略~具象的要素を欠く抽象画は、具象画とは非常に異なるあり方で脳を活性化させることがあげられる。つまりカラーフィールド・ペインティングは、色に関する関連づけを鑑賞者の脳に引き起こすことで、知覚や情動に影響を及ぼすのだ。」今回はここまでにします。