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「具象芸術への還元主義の影響」のまとめ
「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著 高橋洋訳 青土社)の「第12章 具象芸術への還元主義の影響」をまとめます。本書は前章まで主に抽象芸術について論じてきましたが、それら還元主義の知見に基づく新たな潮流が登場してきます。本書で取り上げている画家はアレックス・カッツで、具象芸術や肖像画を制作し始めていました。「還元主義者の具象芸術への回帰という第一の流れは、ニューヨーク派と親しく、単色の背景を用いて解体されたシンプルな肖像画を描くという技法をあみ出したカッツらによって開拓された。カッツの作品は、第二の流れであるポップアートを予兆し、とりわけロイ・リキテンスタイン、ジャスパー・ジョーンズ、アンディ・ウォーホルに大きな影響を及ぼした。」ここでポップアートが登場して世界を席巻していきます。「ポップアート、とりわけウォーホルの作品は、カッツや抽象表現主義の強い影響を受けていたものの、抽象的でも、それほど還元主義的でもなかった。むしろカッツが導入した平坦さやイメージの二重化は、ウォーホルをまったく新たな方向へと導いた。~略~ウォーホルはカッツ同様、繰り返しによって情動を抑えるという考えに基づいて、イメージが反復された絵や版画を制作した。これに関して彼は、『同じものを見れば見るほど、意味が剥奪され快く感じられる』と述べている。」次に本書で取り上げる画家はチャック・クローズです。「脳科学では、還元主義的アプローチの適用に続いて、部分を集めることで全体を説明できるか否かを確かめるために、統合や再構築の試みが行なわれることが多い。」という導入がクローズの作風を物語っています。「相貌失認と肖像画を描くことへの願望を調停するために、クローズは写真と絵画を結びつけた、還元と統合を基盤とする新たな形態の肖像画を開拓した。~略~1960年には、クローズと彼のフォトリアリズムは、ニューヨークのアートの世界で広く知られるようになっていた。そしてカッツとともに、新たに登場した挑戦的な表現様式として肖像画の復活に貢献したのだ。」今回はここまでにします。