Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

原宿の「河鍋暁斎 躍動する絵本」展
今日は工房での作業を休んで、突如思い立って、東京原宿にある大田記念美術館に「河鍋暁斎 躍動する絵本」展に行きました。家内は別の用事があって、今日は私一人で出かけました。幕末から明治にかけて活躍した人気絵師河鍋暁斎は、幾度となく他の展覧会で作品に触れてきました。河鍋暁斎の描く世界は、聖俗も美醜もあり、さらに森羅万象何でも画題にするために、同じ狩野派の中には狩野派の名折れと称する者もいたようです。私も河鍋暁斎ワールドに触れて、その品位もへったくれもない荒唐無稽で振り幅の大きい世界観に圧倒された一人です。我が国では掛け値なしで面白いと言える稀有な画家ではないかと思っています。とりわけ私は魑魅魍魎が跋扈する世界が好きで、幽霊や妖怪好きな人ならたまらない魅力があると感じます。今回出かけた「河鍋暁斎 躍動する絵本」展は、掌サイズの小さなものばかりでしたが、凝縮された細密な世界に見入ってしまい、時間が経つのを忘れました。最近はウィークディにも関わらず、どの展覧会も鑑賞者が多く、とくに本展は河鍋暁斎ワールドに魅了された人々ばかりではなかったかと思えるほど、長く作品の前に留まっている人が多かったように思いました。本展では独自の図録はなかったのですが、ショップで「河鍋暁斎絵日記」という書籍を購入しました。これも暁斎の生活が巧みな筆さばきで描かれていて楽しい冊子になっています。自宅にあった書籍「河鍋暁斎 生涯と作品」(狩野博幸著 東京美術)より、河鍋暁斎の特徴を書いた文章を引用いたします。「暁斎が狩野派の勉学のみを修めた画家であったならば、狂画に類する作品をかくも多作することはなかっただろう。わずかなあいだとはいえ、歌川国芳の画塾で学んだことが暁斎の絵画世界の豊饒さを生み出した。国芳は創造力と想像力を兼ね備えた浮世絵師であった。暁斎にとって妖怪たちや地獄は、想像力を刺激しないではおかない画題であり、国芳師匠ならどんな風に描くだろうかといつも考えていたに相違ない。暁斎の思念を領しているのは、人間界も異界も何ら変わりはしないということであって、その異界描写はつねにすこぶる人間的狂騒に満ちている。」