Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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美術品の運搬について
今日の朝日新聞の「天声人語」に掲載された記事に目が留まりました。「薄く開いた口から6体の極小の仏様がニョロニョロと飛び出す。」これは何のことか、一昨日、私が見に行った東京国立博物館で展示されている空也上人像のことです。記事は貴重な仏像をどうやって運んだのか、おそらく相当苦心したであろう仏像の運搬について書かれていました。少々長くなりますが、引用いたします。「所蔵する京都・六波羅蜜寺からどう運んだのか。『ポキッとなったら大変。まずは外して運ぶ方法を探りました』。~略~しかし調べてみると、金属線が上人の舌に接着され、外しようがない。腹を決め、そのまま運ぶべく寺や博物館と打ち合わせを重ねた。工芸品輸送のために開発された『薄葉紙』が活躍した。指先で裂ける純白の紙で、筒やヒモ、ヘルメットまで自在に手作りできる。極小仏もこれでくるみ、像全体を特製の木箱で囲う。振動で折れないよう木材で支え、万全を期した。運ぶのも一苦労。温度と湿度を一定に保ったトラックで高速をひた走ること約370キロ。展示室で無事な姿を確かめられるまで気が休まらなかったそうだ。『万に一つの失敗も許されない。梱包を解く一瞬の緊張たるや…』。空也を鮮やかによみがえらせた仏師の腕前には舌を巻く。それから八百余年、梱包と輸送の職人たちの心意気にも感じ入った。」美術品の運搬には細心の注意が必要で、それは搬入だけではなく、搬出にも同じように神経を使うのです。日本屈指の貴重な仏像とは比べようもありませんが、私の彫刻作品も自作の木箱に入れて、東京銀座のギャラリーせいほうまで毎年運んでいます。実は作品の木箱をトラックに積み込む時や降ろす時に、私も心の奥ではヒヤヒヤしているのです。個展が開催できる喜びとともに、搬入や搬出の神経の消耗もあって、正直に言えば私はそこから逃げたくなることもあります。美術の展覧会がどんなものであれ、その準備に従事するスタッフの心意気がなければ、展覧会は成立しません。私の場合も専属の業者や若手スタッフに感謝しています。今日の新聞記事を読んで、私には思うところがあったのでNOTE(ブログ)に書かせていただきました。