Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 イメージの素描
三連休の中日です。今日は美大受験生が工房に来ていました。私は土練機を回し、数枚の座布団大のタタラを掌で叩いて作っていました。これは陶彫成形や彫り込み加飾の前段階で行なう肉体労働で、今日は気温が下がっているにも関わらず、シャツを濡らすほど汗を掻きました。こうした作業中に私は作品のイメージが浮かんで、暫し空想に憑かれてしまうのです。これは次作のイメージというわけではなく、さまざまな情景が浮かんでは消えていくのです。紙に描き留めたり、メモをしない自分は記憶の浮き沈みに任せてしまい、そのうちに確かに見えてきたものを次作にエントリーしていくのです。今まで湧いてきたイメージを素描するとすれば、私のイメージには相反するものがあります。ひとつは開かれたイメージで、空漠とした丘陵のところどころに崩壊された建造物が残っている画像です。私が旧作で試みてきた古代遺跡の発掘現場で、「発掘シリーズ」が始まった頃から私に去来するイメージです。もうひとつのイメージは閉鎖された空間に何かが蓄積されたもので、私自身はそれを箱ものと呼んでいます。または限界空間とも呼んでいて、内蔵された造形に、内側へ向う深淵を表してみたい欲求が私にはあるようです。それはトルコで見た石造による地下都市かもしれず、またヨーロッパ各地に点在するカタコンベ(地下墓地)の記憶からきているものかもしれません。カタコンベとは教会地下の通廊の壁に、長方形あるいは上部が半円形の壁龕をつくり、そこに遺体を安置し、煉瓦または大理石板でふさぎ、石灰で密閉したものですが、観光化されたものとしてウィーンのステファン大聖堂のカタコンベが私の記憶に鮮明に刻まれています。そんなイメージが私のどこかに貯蔵されていて、折に触れて頭を過ぎるのです。私のイメージは若い頃に刷り込まれた画像が多く、畢竟するに西欧の文化圏から逃れられないものになっています。陶彫という日本に立脚した技法を使い、西欧の建築要素をテーマにしているところが私の作品の大きな特徴となっていることを改めて感じながら、今日は土練りに汗を流した一日を送りました。