Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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TV番組「光と瞬間 印象の狩人」より
NHKのBSプレミアム「ザ・プロファイラー」で、フランス印象派の画家クロード・モネをテーマにした番組を放映していました。最近のバラエティや報道番組の中で、知的好奇心を掘り下げる番組が増えてきたことを私は歓迎しています。今日も新聞の番組表でモネを取り上げることを知り、テレビを見るのを楽しみにしていました。私は最近まで印象派の先陣を切ったマネの伝記を読んでいたので、後続の画家モネにも興味の対象は広がっていました。私は20代の頃にパリに出かけていって、オランジェリー美術館(一時休館の前だったと思います)の楕円状に展示されたモネの「睡蓮」の連作を見ています。それは刻々と変化する水と光を捉えようとした意欲作で、そこに暫し佇んでいました。モネは青年時代にカリカチュア(風刺画)で知られ、その後は当時サロンで持て囃された神話や宗教を扱った絵画ではなく、身近な風景を描きました。展覧会に出した「印象 日の出」が酷評され、その「印象」という言葉を逆に好意的に用いて、移ろいゆく光を描く印象主義を謳うことになりました。番組ではモネの私生活にも触れ、破産したパトロンの家族を引き取ったことも話に出ていました。妻カミーユとパトロンの妻との間で微妙な関係があったとされ、それでもカミーユが若くして亡くなる寸前まで、モネはカミーユの顔を描いていました。描写によって妻を看取りたいと考えていたのでしょうか。モネの絵画に対する考え方に私が納得した箇所は、一枚のカンバスで描き終えたと思うのは画家の傲慢で、同じモチーフを何度も描いていくというものでした。それがよく表れているのが「睡蓮」の連作で、時間を変え、場所を変え、光の瞬間を捉え、何枚も描いているのです。その姿勢は画家と言うより狩人だろうと番組では言っていましたが、まさに水と光の在り様を捉えようと追求する画家の姿がありました。晩年に白内障を患い、色彩が激しいものに変っていきましたが、それも魂の籠った作品として異彩を放っているように感じます。モネの絵画は日本人が好む画風があって、日本にも数多くの作品があります。水に浮かぶ睡蓮は日本画のようでもあり、その解釈に共通したものがあるようにも思えます。