Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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新聞記事「間にあるのは何だ?」
今日の朝日新聞夕刊に彫刻家若林奮の「雰囲気」と名付けられた立体作品の論評が掲載されていました。故若林奮先生は、私が大学で彫刻を学び始めた頃に、その大学の教壇に立っていられましたが、先生が所属されていたのは彫刻学科ではなく共通彫塑でしたので、私は直接教えを乞うことが出来ませんでした。当時から先生の立体作品は不思議な魅力があって、私はよく個展にお邪魔していました。私にとって謎だらけの立体作品と不可解な題名に何かヒントを得ようと思って、先生の講評会にも何度か伺いましたが、そこで話されていた距離や空間という認識が今ひとつ私の理解が覚束ず、造形に対する思索と言うのも私には縁遠いものと思っていました。当時私は人体塑造をやっていて、目の前にある人体の骨格の把握に悩んでばかりいて、距離や空間まで意識が回らなかったのだろうと思い返しています。彫刻は立体であり、その存在は空間があってこそ成り立つという極めてシンプルな解答に辿り着くには、海外生活も含めて時間が必要だったと振り返っています。記事を引用します。「寡黙にして多くを語らずとも、それが難解な思索の結晶であることだけは確かに感じ取ることができる。一定の距離を挟んで向かい合う人物と犬。中央に置かれた四角い紙の囲いが、両者の間に横たわる何ものかの存在を示唆している。上からのぞき込んだら、何が見えるのだろうか。~略~そもそも若林にとって、距離や空間とは数値で表されるような均質なものではなく、『そのつど伸びたり縮んだり変化しながら体感させるもの』であったらしい。」(西田理人著)作品の題名に「振動尺」とか「所有・雰囲気・振動」とあるのは、作家独自の概念によるものであることが分かってきました。自分にとって空間とは何か、その空間の解釈として作品(解答)を存在させていくというのが若林流の方法論で、それは自分の理念にも通じていると言えます。