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「シュルレアリスム宣言・溶ける魚」を読み始める
「シュルレアリスム宣言・溶ける魚」(アンドレ・ブルトン著 巖谷國士訳 岩波書店)を読み始めました。何をいまさらシュルレアリスムなのかと自問自答しましたが、実のところ私自身は本書を読むのは初めてなのです。自宅の書棚には「シュルレアリスムと絵画」(瀧口修造・ 巖谷國士監修 人文書院)と「魔術的芸術」(巖谷國士監修 河出書房新社)があって、この2冊がアンドレ・ブルトンによって著わされた書籍で、私にシュルレアリスムを指南してくれた貴重な資料なのでした。勿論日本人評論家が著したシュルレアリスムに関する資料もありますが、シュルレアリスムは私の中で旧知の芸術運動であり、私の芸術に関する思考の中でも今も大きな位置を占めています。シュルレアリスムは超現実主義として美術教育の中でも取り上げられ、小学校時代に私はサルバドール・ダリの絵画を見て、その不思議さが印象に残りました。ダリの絵画はシュルレアリスムの代名詞になっていましたが、高校時代にさらにさまざまな画家を知るにつけ、シュルレアリスムの定義を知りたくなっていました。実際のシュルレアリスムは多様性に富み、広範囲な考え方を網羅していることも学びました。私が20代で滞在していたウィーンでは、画廊のウィンドウに当時席巻していたウィーン幻想派の絵画や版画が飾られていましたが、これもシュルレアリスムの範疇にあったようです。ウィーン幻想派は黙示録的ビジョンやエロティックな要素が強く、ウィーンの古い街と融和して独特な雰囲気を醸し出していました。20代の頃の私は、日本で学校を出ても就職活動をせず、ヨーロッパを彷徨う不安定な生活を送っていたので、ウィーン幻想派の精神分析的な画風に取り込まれてしまい、見えない将来に対して暗中模索を繰り返していました。シュルレアリスムと聞くと、私はそんな青春の感傷が頭を過るのです。これは個人的過ぎる感情の一幕ですが、帰国後改めてシュルレアリスムの思想を研究しました。今回読み始めた「シュルレアリスム宣言・溶ける魚」は私にとって再確認の意味もあります。一歩ずつ踏みしめて読んでいこうと思います。