Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

J・コーネルに思いを馳せる
シュルレアリスムに関する書籍を読んでいる最中に、箱による造形作品を作ったアメリカ人芸術家のジョセフ・コーネルに思いを馳せていました。シュルレアリスムの代表選手の中では誰もが知る巨匠とは言えませんが、私にとってコーネルは大きな存在感のある芸術家なのです。千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館にはコーネルの充実したコレクションがあり、私は度々訪れてはこの箱の造形作品を見ているのです。箱の中にはコーネル自身が古本屋や骨董品屋で手に入れたものや思いのある品々が収められていました。これはアッサンブラーシュと呼ばれる技法で、そのオブジェたちをどのように配置するかは、コーネルの詩的発想からきていて、その謎解きや解釈を鑑賞者が楽しむというものです。箱の中に自らの思索や記憶に基づいた造形を行うのは、自分にとってたまらなく魅力的で、制作工程では心の中で自問自答し、自分だけの世界を紡ぎだすのです。こうした作品を作ったコーネルとはどんな人物だったのか、かなり内向的な人物だったのか知りたくなって、10年前に伝記を読んでいます。詳しい記録は2013年4月2日のNOTE(ブログ)にあります。コーネルの箱の作品について解説書も読んでいます。それは2013年5月8日のNOTE(ブログ)にあります。コーネルはほとんど自宅の地下室で箱の作品を作っていたらしく、小児脳性麻痺の弟の面倒を見ながら一生涯を送っています。慎ましい生活ぶりが伺えますが、作品は豊かな抒情を湛え、鑑賞する者に夢想を誘います。作品が作者を超え、独り歩きを始めて、さまざまな世界を主張しているように私には感じられました。シュルレアリスムによって心が解き放たれた状態は、私たちにも大きく息を吸い込んだ状況を提供してくれるものだと思うようになりました。