Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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日付のある立方体
7月の個展に出す新作は、同じサイズの陶彫による立方体を積み上げたり、点在させて展示する集合彫刻です。立方体にはそれぞれ日付を刻んであります。つまり1年間365点で完結する作品です。立方体にはひとつずつ異なる文様が彫り込んであり、同じものはひとつもありません。自分の中で日記のように坦々と作り上げていく労働の蓄積を求めているのです。その発想は2007年から継続しているRECORDと称する平面作品から生じたものです。RECORDは文字通り記録を意味していて、一日1点ずつポストカード大の小さな作品を夜の時間帯に制作していました。というのはその頃私は教職にあって、彫刻家との二束の草鞋生活を送っていたために、RECORD制作には夜しか時間が取れなかったのでした。かなり早い時期からRECORDを立体にしたらどうだろうという考えを持ちましたが、ただでさえ多忙な生活の中で、毎晩立体を作るというイメージが湧かなかったので、その発想を封印してきました。退職した今となって、漸く同じサイズの立体を日々作ることを実践してみようと思い立ったのです。ただし平面RECORDのように一日1点という制作日程は、陶彫でやるのには無理がありました。陶彫には土練り、成形、加飾、乾燥、仕上げと化粧掛け、焼成という制作工程があるため、一日ひとつずつ作ることは不可能でした。それでも数点ずつ1週間くらいかけて作っていて、何とか食らいついていこうとしています。今夏の個展では1月1日から5月31日までの陶彫作品を展示する予定です。1年間の作品が揃うのは来年になってしまいそうです。同じサイズの立方体という手枷足枷のなかで、文様のパターンを展開し煮詰めていく作業に、私は不思議な魅力を感じていて、その時その場の迷いや試みや模索を通して、具現化まで辿り着くプロセスに、自分の内面との対話を繰り返していると言っても過言ではありません。それはゴールが見えた完成作品というより、常に未完のまま突き止めていく制作工程が、私にとっての活力であり、葛藤でもあると考えているからです。