Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 「坪庭」の彫り込み加飾開始
日曜日になると、後輩の彫刻家がやってきて、真摯に制作に立ち向かっているのが恒例となりました。彼がいると、あぁ今日は日曜日なんだなぁと思います。私は先日から作り始めた中規模作品の「発掘~坪庭~」の彫り込み加飾に取り掛かりました。陶彫立方体の彫り込み加飾は、151点のひとつひとつ文様を変えて彫り込んでいますが、「発掘~坪庭~」は全ての陶彫部品に同じパターンの文様を施します。集合彫刻の統一感をもたせるためです。成形したものは曲面ばかりの有機的な形態なので、そこに彫り込むカタチも楕円形にすることにしました。楕円形を陶彫全体に線描し、そのうちいくつかを刳り貫きました。刳り貫かず彫り込んだままの楕円形もあって、リズムを感じさせるように工夫しました。穴の刳り貫きは十分考えて行わないと、そこに罅割れが生じることがあります。自分が使っている陶土がどのくらいの耐性があるか、また陶土自身の癖もあるので、それを考慮しながら作業を進めました。陶彫の面白みもそこにあります。高温で焼成すると陶土は石化して、まるで違う物質になります。二割程度収縮するのも特徴です。窯を開けると、炎神のパワーを浴びて陶土が鎧を纏ったように感じるのは私だけでしょうか。成形にしても彫り込み加飾にしても、最終工程の窯入れを念頭に入れて作業を進めています。穴を開けるのは焼成中に空気の通り抜けをよくするためにやっているとも言えます。陶彫作品は内側ががらんどうなので、熱された空気の通り道を作ります。でもその穴が彫刻に面白い効果を齎せます。今日は後輩の彫刻家も自ら作っている木彫に穴を開け始めました。穴は彫刻の内と外を繋ぐ空間としては重要な役目があります。意図的に彫刻に穴を開け始めたのはイギリス人彫刻家ヘンリー・ムアでしたが、彼が試みたことは空間造形としては革新的なことでした。陶彫は意図しなくても穴を開けることが不可欠ですが、これを彫刻的な革新性と捉えても構わないと私は思っています。彫り込み加飾はそうしたことも踏まえて、陶彫の不可欠さ、彫刻の空間の在り方の双方から捉えてやっていると考えています。