Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「むすびにかえて」について
「像をうつす」(金井直著 赤々舎)の「むすびにかえて」について、気に留めた箇所をピックアップいたします。この章で本書は最終章になります。「各章で繰り返し彫刻と写真を語ることで、何が見えてきただろうか。三次元と二次元、物体とイメージといった二分法に当てはめられるや、今更ながらメディウム・スペシフィックな分類に収まりがちな両者のあいだに、実は共通性と親和性、相互依存など、さまざまなつながりがあることが明らかになったのではないか。とりわけ近代彫刻(史)に関して言えば、その自律性(ないし孤立)をあらためて問い直し、むしろそれを他の視点や文脈とつなぐ機会になったと思う。そもそも本書の副題は『複数技術時代の彫刻と写真』であったが、私は19世紀の写真の出現をもってその『時代』の到来とは見ていない。写真さらには映画を軸に複製のアクチュアリティを語るヴァルター・ベンヤミン(1892-1940)の『複製技術時代の芸術作品』(初稿1935年、第二稿1935-36年)の議論の流れからはやや逸れて、むしろ18世紀の彫刻複製産業の興盛(産業革命と新古典主義の相乗り)こそが近代的な複製文化とその鏡像としてのオリジナル信奉の一つの培地となったと考えている(ここに複製版画産業も加わってくる)。~略~彫刻と写真の経験は地続きなのだ。ともに近代のアログラフィック的な技術に支えられつつ、時の場に応じてオートグラフィックな芸術の相貌をまとう実践なのである。」彫刻と写真という一般的に考えれば両極にある媒体を、地続きとして扱ったところに本書の独自性があったと私は思いました。彫刻は空間芸術であるが故に、絵画に比べれば写真撮影の面白みは圧倒的に多くあり、撮影された対象自体も彫刻の立体性を離れて、その物体が織りなす光陰に撮影する個性が反映すると私は思っています。本書はブランクーシの図版が多かったので購入した次第ですが、面白い論考に出会えて私も2つの媒体の関係性を改めて学習しました。