Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

公共作品廃棄を憂う
今日、ギャラリーせいほうに読売新聞社の記者がお見えになり、いろいろな話をしている中で、「大変残念なことですが…」と切り出された話が、表題になった公共作品廃棄に関することでした。彼は新聞のコピーを持参していました。7月18日付の中国新聞から引用いたします。「旧広島駅ビル(広島市南区)の壁面を55年間にわたって飾った、日本を代表する彫刻家舟越保武さん(1912~2002年)の作品『牧歌』が、2020年の同ビル建て替え工事に伴い廃棄されていたことが分かった。広島の玄関口で長年愛された作品の消失に、市民からは残念がる声が上がっている。」というもので、廃棄されたのは高さ約1.5メートルの2体のブロンズ像だったようです。横笛を吹く少年と花を持つ少女と数羽の鳩で構成された作品は、平和を祈願する広島に相応しいテーマでした。彫刻家舟越保武は長崎市にある長崎26殉教者記念像で知られた文化功労者で、この記念像は私も実際に見ていて、特定宗教というより平和全体を象徴するものになっていました。中国SC開発の総務部長は「作品の存在と芸術的価値について認識できず、作品を失う事態を招いた。再発防止策を徹底したい」と説明していますが、撤去する前に、これは何だろう、壊していいものかどうかを、何故美術館なり専門家に聞かなかったのか、私は甚だ疑問に感じます。芸術の世界は広く市民に行き渡っているものではなく、彫刻界の巨匠も一握りの人だけが知っていることは私も理解しています。それでも公共作品に対する尊重姿勢はあるべきだろうと思っています。今後ますます芸術表現が街へ出ていき、公共作品として存在するようになると私は思います。これは豊かな文化を育むものであり、街に氾濫する看板とは異なるものです。どうか、多くの人の理解を求めたいと考えます。