Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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涼風を期待する9月になって…
今日から9月ですが、酷暑は相変わらずで、空調設備のない工房での制作は苦行のようです。それでも最近は暑さの質が変わってきたように思います。湿度が減ったのでしょうか。こんな多少乾いた高温の中にいると、20代の頃旅したトルコやギリシャを思い出します。あの時もちょうど8月から9月にかけてエーゲ海沿岸を転々とバスで回っていました。交通のないところはヒッチハイクをして遺跡を訪ねて歩きました。かの地の乾燥度合はもっと厳しくて、私は日焼けをし過ぎ、肌は黒々となってガサガサになりました。周囲の土埃が舞い上がり、黄色い大地と紺碧の空が印象的でした。広々と大地に広がる崩れかけた遺跡の中で、私はデッサンをしたり、写真を撮ったりして過ごしていましたが、時間に追われることもなく、日が暮れるまで遺跡の一部に腰かけて、その風景を脳裏に焼きつけていました。のんびりした時代を経過して、やがて始まった「発掘シリーズ」ですが、60代になった今もシリーズは継続しています。当初と比べると実際の遺跡のイメージは希薄になって、作品に出土品のような雰囲気はあるものの、現在は別な存在になっていると思っています。現在作っている日付のある陶彫立方体は、もう遺跡と呼ぶには躊躇いがあります。最終的に私は作品をどの方向にもっていくのか、またイメージの原点に戻るのか、まだ考えが及びません。今月も先月に続いて只管陶彫立方体を作り続けていくことしか頭にありません。そろそろ涼風が立つ9月になってほしいと期待していて、陶彫制作に精を出したいと思っています。秋が深まれば美術館や映画館にも出かけていきたいし、いろいろな書籍にも手を出したいのです。芸術の秋と呼べる季節はいつ到来するのでしょうか。