Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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キュビズムと彫刻について
先日、東京上野の国立西洋美術館で開催されている「キュビズム展」に行って、私はさまざまな感想を持ちましたが、彫刻作品も並べられていて、じっくりと観てきました。キュビズムに限らず美術史の価値転換を図る運動には、まず絵画が率先し、その革新的実験を繰り返し、その後追いとして彫刻が続いているように私は感じています。今回の「キュビズム展」でも絵画に比べると、彫刻は形態的にまとまっていておとなしい印象を持ったのは私だけでしょうか。それでもプリミティヴ美術の影響や構成的要素を取り入れた立体作品が私を捉えていました。構成的な作品はジャック・リプシッツやアンリ・ローランスのデフォルメされた立体にキュビズム独特な雰囲気を見て取りましたが、やはりプリミティヴ美術から発展したモディリアーニやブランクーシに私は感銘を受けました。モディリアーニの彫刻を評した文章を図録より拾います。「彼の絵画と彫刻作品の展開は、キュビズムの流れを汲んでいる。それは、セザンヌ主義を経て、直彫りへの回帰、そして創作の中心に彫刻を据えたいという意志へと至り、プリミティヴィスムによって培われる。プリミティヴィスムは、ピカソ、そして間違いなく彼が出会っていたドランのアトリエではもちろんのこと、1909年以降、彼の彫刻作品の成熟に不可欠な役割を果たしたブランクーシのところでも頻繁に議論されていた。モディリアーニは、エジプト、クメール、アフリカ、そしてイタリア美術でさえ、あらゆるものに興味をもつのだ。~略~リプシッツは、モディリアーニが彫刻の衰退の原因としたロダンの影響について彫刻家たちが議論していたことを次のように思い起こさせる。『油分の多い粘土を使ったモデリングの濫用は、体制批判をする者たちに〖泥臭い〗と言われた。彫刻を救うためには、石を直接彫ることに戻るしかない。このことについて、私たちは激しい議論を交わした。(中略)しかし、モディリアーニは揺るぎない信念をもち続け、その信念は彼の心のなかに深く根付いていた。モディリアーニが頻繁に訪ねた隣人であり友人であったブランクーシは、自分の理論に彼を引き込んでいった』。」(ソフィー・クレップス著)こうした彫刻へのアプローチが知れただけでも「キュビズム展」に来て良かったなぁと私は思いました。