Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 空間に対する意識
今日は日曜日ですが、平日と同じく工房に籠って制作三昧をやっています。彫刻は私のライフワークになっていて、10代の終わり頃からずっと関わりを持っています。彫刻は今でこそ空間を基盤にした造形という私の認識ですが、私は初めからそんな空間を意識していたわけではありません。彫刻を始めた時は、モデル台にモデルを立たせて、粘土による塑造で正確な量感把握をやっていました。その頃の私は立体構造を掴むのに苦労していて、私には立体という認識がないのではないか、そもそも資質的に彫刻に向いていないのではないかと自分を疑っていました。当時は池田宗弘先生から、時に厳しく時に粘り強く指導を受けていて、よく先生に見放されなかったなぁと振り返っていますが、どうやら私の熱心さに先生の心が動かされていたことを後になって知りました。自分の色感に絶望していた私は形態しか頼るものがなかったのも事実で、制作をやっていれば時間が経つのを忘れるほど無我夢中だったのでした。それではいつ頃から自分の中に空間という意識が入ってきたのでしょうか。亡父が造園を生業にしていて、私は半端人足として仕事に出ていました。その頃、庭石の配置や植木の向きなどを父や職人から指示されて、私は力仕事を担っていました。庭という規定された範囲の中で石や樹木をどう動かすのか、そこに漸く空間という意識が芽生えたのではないかと思い出していますが、当時は大学でやっている彫刻と、アルバイトでやっている造園とを結びつける発想はありませんでした。彫刻と造園が繋がるのはイサム・ノグチの思想を知るまで待たなければならなかったのでしたが、彫刻と造園、双方の空間に対する意識が自分の中で合致した時には、既に父は他界していました。それから造園家重森三玲の世界観を知り、場面によって変化する自然石や樹木の交じり合う面白さに私は酔いしれました。エーゲ海で見た遺跡の数々のイメージを私は集合彫刻として配置して、造園の考え方を取り入れた空間をそこに演出しました。空間に対する意識、今の私にとってこれが彫刻制作の重要なポイントなのです。