Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「ジョセフ・アルバースの授業」展の図録より
最近の展覧会ではその場で図録の販売は行わず、予約販売という形式をとっているものがあります。展覧会を見た直後に図録で確認したいことがあっても、それが出来ない欠点はありますが、暫く経って送られてくる図録を読んで、再度展覧会を思い出し、芸術家の背景をじっくり知るという意味では、あるいは時間をおいた方がいいのかもしれません。また展覧会によってはかなりマニアックで、図録がどのくらい売れるのか分からない場合もあるので、無駄を出さないための予約販売は効率的なのでしょう。DIC川村記念美術館で開催されていた「ジョセフ・アルバースの授業」展は既に終わっていますが、漸く図録が手元に届きました。「芸術家やデザイナーが同時に教師でもあることは珍しくない。しかしアルバースの特殊性は、授業と制作という2つの営みが密接に結びついていた点にあるのではないか。しかもその授業では自分の制作技術を伝授したのではなく、ごく簡単にいえば、物事に向かうための態度を自らの制作においても貫いたのだった。」(亀山裕亮著)嘗て教職に就いていた私にとって頭の痛い箇所もありました。「アルバースが強調したのは、教師は実践のともなう芸術家であるべきであり、『自らの手で実験的な研究をし、制作において影響力を発揮するだけでなく、学生を教えるにあたっても他に依存せず、自らに対して責任を持っている』人でなければならないということだ。これらの必要条件は、彼が自らの実践に対して課したのと同じものである。~略~アルバースにとって教えることは、特権的な情報を与える教師がいて、広く認められた知識を手に入れる学生がいる、という話ではない。教えることは問いを投げかけることであり、答えを与えることではないのだ。そしてアルバースは、教えることよりも学ぶことのほうに特権的な地位を与えていた。」(ブレンダ・ダニロウィッツ著)教育の理想的な姿を実践していたアルバース。美術科はそれが他の教科より可能であろうと私は教職にいた当時から思っていましたが、私も教材等を含めて模索をしていたことを思い出しました。