Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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朧げな記憶を辿って…
先日、映画「鬼太郎誕生」というアニメ映画を観に行った日の夜に、私は久しぶりに夢を見ました。映画に登場した戦後復興期に都市化から取り残された農村風景が、どうやら私を刺激したらしく、私の夢には自分が幼い頃、近所の友達とよく遊んだ田畑が出てきました。事実、私の実家の前は、まだ舗装もされていないデコボコな道路があって、その脇には小川が流れ、田んぼが広がっていました。田んぼの畦道を行くと広い畑があり、さまざまな農作物を生産していました。その頃はスイカ泥棒もいました。そんなムラには因習も残っていたはずですが、私にはその記憶がありません。母は東京から嫁に来ていたので、きっといろいろなことがあったのでしょうが、私には何も言いませんでした。私の実家には、祖父母や父の2人の妹(つまり私の叔母)がまだ未婚で同居していたため、母はきっと苦労していたはずです。実家の近くには雑木林がいっぱいあって、苔むした地蔵もよく見かけました。私は土地の御霊を祀った場所に、畏れを抱きながら惹かれていたのは事実で、見えないものを感じる力があればいいのにと思っていました。そんな私の怪奇趣味を両親は嫌っていて、友人から借りた「墓場鬼太郎」など読むのは止めろと言われました。ただし、私の住む横浜は都心に近く、田畑や雑木林は忽ち開発されて宅地になっていきました。横浜が都心に通勤する人たちのベッドタウンになっていくのを見るにつけ、私は小さな地蔵や稲荷はどこへいってしまったのだろうと思っていました。捨てられていた稲荷を拾って裏山に据えたと祖母が言っていたのを私は覚えていて、これは大切にしないといけないと今も思っています。横浜は地方の農村ではないので、あっという間に都市化が進み、今では港周辺は観光地として成立しています。私の朧げな記憶も消えかけています。でも日本古来が発祥となる幻を尊ぶ文化は、どこかで残したいと私は考えていて、絵巻物などに表現された魑魅魍魎が跋扈する世界を忘れてはならないと思います。