Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「ロンカッリとダルピーノ 」について
「カラヴァッジョ」(宮下規久朗著 名古屋大学出版会)の第2章「1600年前後のローマ画壇とカラヴァッジョ」の中の「3 ロンカッリとダルピーノ 」の気になった箇所を取り上げます。題名になった2人の画家はカラヴァッジョの師匠でありライバルでもありました。「クリストファノ・ロンカッリ通称ポマランチョ(1552-1626)は、ちょうどカラヴァッジョがローマに来た頃アカデミア・サン・ルカの総裁となり、世紀のかわり目に旺盛な活動を展開した画家である。~略~《キリストの埋葬》は、現在ヴァチカンにあるカラヴァッジョの同主題の作品との関係が指摘されてきた。右端で悲嘆のあまり両手を高く挙げて天を仰ぐマリアを導入した点や、キリストの遺体を安置するための大きな『終油の石』を描いた点など、両者のいくつかの図像的共通性はカラヴァッジョがこの作品を研究したことをうかがわせる。」次にダルピーノです。「カラヴァッジョがローマに出て間もなく1593年にその工房に入り、八カ月そのもとにいたジュゼッペ・チューザリ通称カヴァリエール・ダルピーノ(1568-1640)にカラヴァッジョが大きな影響を受けたことは間違いなく、一種の定説と化している。しかし、ダルピーノのもとで描いたとされる静物画の問題を除いて、カラヴァッジョの作品にその具体的な痕跡が見出されることはほとんどなかった。~略~ロンカッリの場合と同じく、《慈悲の七つの行い》に直接的な人物像の借用が見られ、《生誕》にはそれをより発展させた形の人物像が登場しているのがわかる。《貧者と病人の中にいる聖ラウレンティウス》はカラヴァッジョがグルピーノ工房に入る少し前の作品だが、一時的にせよダルピーノ工房で修行したカラヴァッジョは、ダルピーノの構想過程や制作の手順などを習得しており、そのため他の作家の作品よりダルピーノの作品を印象深く受け止めていたに違いない。カラヴァッジョはかつての師にして画壇の頂点に君臨する人物に反逆し、超克しようとすると同時に、時にそこに着想源を求めたのである。」今回はここまでにします。