Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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新聞記事より「多彩な繊維造形」
昨日の朝日新聞「折々のことば」より、記事内容を取り上げます。「女たちが膝上でおこなう繊維造形は、道具や装置が素朴でも、多彩をきわめる。福本繁樹」この言葉に著者の鷲田精一氏がコメントを寄せています。「南太平洋の島々で伝承される布の製法に魅せられてきた美術家。縒る、絡る、糾う、綟る、縛る、綣く、結ぶ、繃ねる、繋ぐ、操る、縫うといった『織り』以前の技法は、アートや工芸と呼べば軽すぎ、人工物と言えばあじけないと言う。見せ物でも売り物でもない商品以前のモノ。『始源と現代を同時に研究するんだ』と口にしていた師の志を継ぐ。『織物以前のこと』から。」これは染織に限らず、どの造形分野でも始源があり、それに着目して、現在でも素朴なまま伝承されているものを見ると、自分の心の奥底から不思議な意欲が湧いてくるのは私に限ったことではないでしょう。布は身体に巻き付けたり、大地に敷くものとして、人は重宝してきましたが、同時にそこに色彩や装飾を施すことで、日常生活を豊かに演出してきたのです。私が接している土も同じです。機能以外に何かを加えることで、人は遊び心を手に入れ、美しいと言う概念に目覚めることになったと私は考えます。人間は道具を手に入れ、その道具の機能を効果的に使うと同時に、そこに美意識を盛り込み、やがてその美意識を集団同士で競い合ったのではないか、縄文土器はそうして過剰な装飾を纏ってきたのではないかと私は想像しています。そこに意味を見出すかどうかで、文化の誕生・黎明に繋がると私は些か雑駁なことに思いを巡らせました。私自身は現在でも素朴な道具や装置を使って多彩なる作品を作ろうとしています。始源と現代を同時に研究するというのは、何て素敵なことでしょう。