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「カラヴァッジョの複数作品」について
「カラヴァッジョ」(宮下規久朗著 名古屋大学出版会)は、今日から「第5章 真贋の森 」に入ります。本章最初の単元「1 カラヴァッジョの複数作品」の気になった箇所を取り上げます。「作品が少ないにもかかわらず、生前から美術家にもコレクターにも大きな人気があったことから、早くから学習用の模写や代用品、贋作にいたる様々な目的でコピー(模写、模作)が作られた。同時代の他の巨匠にくらべてもカラヴァッジョにはコピーが多く、ひとつの原作のまわりには数点から数十点のコピーが存在する。~略~また、カラヴァッジョの作品では、ほぼ同じ図様のものが二点あるものがある。ここでは仮に複数作品とよぶが、いずれが真筆であるか、あるいはどちらも真筆なのかという問題を提起してきた。大きく分けて、まったく同じ図像の作品でも作品でも、描写も様式も寸分たがわないものと、やや様式の異なるものとがある。」その複数作品は画家本人が作ったものなのでしょうか。「短期間に奔放に才能をほとばしらせて散ったカラヴァッジョのような天才が、自作を丹念にコピーするなどとは考えがたいようだが、17世紀には画家が自作のレプリカを作ることはごく一般的であった。あるパトロンのために制作した作品を見た別のパトロンがそれをほしがるという事態になった場合、画家はレプリカを作ってその要求に応えたのである。同時期に作る場合はほとんど同じものになったであろうし、時間がたってからの場合は様式に多少の変化が生じたであろう。~略~カラヴァッジョの作品では、ローマにあった作品の多くにはコピーが作られたのだが、ミラノやマントヴァなど北部にあったものはコピーされず、ナポリやシチリアやマルタに残った作品は特に多くのコピーが作られている。カラヴァッジョ様式が熱心に摂取され、大きな人気を博した地域にあった作品は数多くのコピーが作られたわけである。」今回はここまでにします。