Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 トイレにあるP・クレー
今日は日曜日なので創作に纏わることを書きます。私が自宅の中で注目しているのはトイレに貼られた月捲りのカレンダーです。2年前から我が家は、パウル・クレーの画像が全面にあるカレンダーにしていて、トイレに入る度にその色彩と線描を眺めては、私は時に心が安らぎ、また時に心に刺激を受けているのです。ドイツの画家パウル・クレーは20世紀初頭に活躍し、当時革新的な美術教育をやっていたバウハウスで教壇に立っていました。作風は色彩や線を実験的に多用し、そこから迷宮のような世界に私たちを誘います。一見子どもが描いたような痕跡に見えますが、それは児童画のような自由自在な装いを纏っているだけで、塗られた色彩や何気なく描かれた線描には、緻密な計算があるように思えます。パウル・クレーが感覚的に線を引いていたとしても、どこかに知的遊戯性を感じてしまうのは私だけでしょうか。このような絵画は誰でも描けるように見えて、パウル・クレー本人にしか描けない世界観なのです。それはドイツという国のもつ気候や国民の気質に通じています。同じような子どもが描いたような痕跡をもつ絵画にジョアン・ミロの作品がありますが、ミロの世界観はスペインの明るさに通じていて、クレーのそれとは異質な美的情緒です。私は20代の頃にドイツ語圏の国に暮らしたことがあるので、クレーの世界観は感覚的に理解できます。私はクレーの色彩と線描に深淵なるものを感じ取っていて、冬の厳寒な気候を思い出してしまうのです。そこに陽光はなく、曇り空が毎日続いている鬱々とした気分が甦ります。壮大な音楽や哲学が発展したのも、自分がかの地で暮らしたからこそ解るものだったんだなぁと思います。トイレにしゃがみこんで、今日はそんなことを考えました。