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「《キリストの復活》再現の試み 」について
「カラヴァッジョ」(宮下規久朗著 名古屋大学出版会)の「第10章 失われた最後の大作 」の「4 《キリストの復活》再現の試み 」の気になった箇所を取り上げます。本単元をもって本書は全て終了となります。画家カラヴァッジョの最晩年の作品は「生誕」と「キリストの復活」ですが、その双方とも失われています。「生誕」は盗難に遭い、「キリストの復活」は礼拝堂の倒壊に遭いました。「第二次ナポリ時代の作でもっとも重要な大作は、サンタンナ・デイ・ロンバルディ聖堂のフェナロリ礼拝堂に設置された《キリストの復活》である。この作品は、1805年にナポリを襲った大地震で教会が倒壊したときに失われたとされる。」そこでさまざまな人が、カラヴァッジョに関連した同時代の別の画家の作風から「キリストの復活」の再現を試みましたが、決め手となるものは未だにありません。「(《キリストの復活》は、)マルタ時代の《洗礼者ヨハネの斬首》からシチリア時代の《聖ルチアの埋葬》や《ラザロの復活》を経て、先ほど考察したパレルモの《生誕》にいたる構成の延長線上にあると考えられるのである。とはいえ、マルタ・シチリア作品ほど茫漠とした広い空間ではなく、パレルモの《生誕》のように、ある程度、人物が画面の表面近くに配されていたであろう。薄暗い空間にひそやかにたたずむ聖母を囲む二人の聖人と天使という構成が、中央に立つキリストとその周囲に横たわる兵士たちという構成に継承され、同じような静謐な印象を与えたと推定できるのである。カラヴァッジョが最後に示した新たな様式展開は、マルタ・シチリア時代の茫漠とした空間構成から、より人物の比重の大きなローマ時代のそれに回帰する傾向にあったといってよいだろう。画家自身もローマへの帰還を切望していた頃であった。しかし、画家のローマ帰還が果たせなかったように、この新たな様式展開も途絶され、わずかではあったがその見事な成果たる作品も、皮肉なことに画家の淡い夢と同じく消失してしまったのである。」これで本書の幕引きとなりますが、後日改めて読後の感想をアップし、私が感じたカラヴァッジョについて述べさせていただきます。