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「レオナルド・ダ・ヴィンチ」について・1
「芸術家列伝3」(ジョルジョ・ヴァザーリ著 田中英道・森雅彦訳)に今日から入ります。本書は翻訳者が変わります。本書はレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロの二大巨匠がメインです。まず「レオナルド・ダ・ヴィンチ」についてですが、幾つかに分けて気に留まった箇所をピックアップしていきます。今回は「最後の晩餐」に纏わる箇所をピックアップします。「ミラーノにおいて彼はサンタ・マリーア・デㇽレ・グラーツィエ寺の聖ドミニコ派宗団のために『最後の晩餐』を描いたが、それは限りなく美しく、驚嘆すべき作品であった。使徒たちの顔にあまりの荘厳さと美しさを与えてしまったので、キリストの顔は未完成のままに残された。キリストの姿に要求されるあの世の神性を与えることがもはやできないように思われたからであった。かくしてこの作品は完成に近づいたところで、すでにミラーノ人のみならず外国人によってもこの上ない賞讃の的となったのである。レオナルドは、この絵で構想した、誰が主を裏切るであろうか知りたがっている使徒たちを襲った不安と危惧の念の表現に見事に成功した。それゆえに使徒たちの顔には、愛、恐怖、怒り、さらにまたキリストの心を理解することのできぬ悲しみが宿っている。これらに劣らずすばらしいのは、対するユダの頑な態度、憎悪、裏切りの姿である。その上、作品のどの部分においても信じられぬほどの丹念さで描かれ、テーブルクロスの布の質にいたるまで描きこんでおり、本物のリンネル布でさえこれ以上本物らしくは見えないようであった。この絵のあった修道院の院長は、レオナルドが絵を完成するよう執拗に懇請した。レオナルドが、ときには半日も絵の前でぼんやり物思いに耽っているのが異常に思えたのである。そして、画家も地面を鋤く庭師のように、画筆を休めずに制作することを望んだ。院長は不満に思い、ミラーノ公に苦情を言ったが、その訴えがあまりに強い調子だったので、公も仕方なくレオナルドに作品を完成するよう言葉巧みに頼み、院長がしつこく言うのでこう言うのだと語った。レオナルドは公の頭の良さを知っていたので、院長に決して話したことのないことを、公ともっと話したいと願った。そして、芸術について説明し、次のことを納得させた。高い才能をもつ人は、実際に働いていないときこそかえってより多くの仕事をしている。頭のなかで創意を求め、完全なる観念を形づくろうとするからである。まず脳裏で構想し、次に手を動かすことになる。」今回はここまでにします。