2025.08.25
「芸術家列伝3」(ジョルジョ・ヴァザーリ著 田中英道・森雅彦訳)の「レオナルド・ダ・ヴィンチ」について、幾つかに分けて気に留まった箇所をピックアップしていきます。今回の作品はルーブル美術館所蔵の絵画ですが、レオナルドのデッサンを基にルーベンスが模写をした「アンギアーリの戦い」です。「その仕事を実現すべくレオナルドは、サンタ・マリーア・ノヴェㇽラ寺の法王の間で下絵を描きはじめた。そこではミラーノのフィリッポ公の隊長ニッコロ・ピッチニーノの物語が描かれ、一群の騎馬兵が軍旗を奪い合って戦っているところが素描されていた。この遁走する場面は驚くほど熟慮のほどが示されており、卓越さと熟達が見られた。そこには憤怒、憎悪、復讐心が、人物のなかばかりではなく馬のなかにもあらわれていた。そのうち二頭が前脚をからめ合い、歯牙によって闘うさまは、軍旗を奪い合う騎兵たちの戦いと優とも劣らないものであった。そこでは一人の騎兵が肩の力で軍旗を抑えて旗の竿をつかみ、一方遁走する騎兵は体をうしろにねじ曲げ、その手から力づくでもぎ取ろうとしている。二人は片手で旗竿を抑え、片手に剣を振り上げて、その旗竿を切断しようとしている。一方、一人の赤い帽子をかぶった老騎士は、片手で旗竿をにぎり、片手に彎曲した刀を振りかざし、怒りに満ちて、抑える二人の手を切ろうとしている。彼らもまた歯をむいて狂暴なる身がまえをしており、彼らの軍旗を守ろうとする。また地上では、馬の脚の間に短縮法で二人の人物が闘うところが描かれている。一人が地面に倒れており、他の兵士は馬に乗り、腕をできるだけ高くさし上げて、生命を断とうと力いっぱいに短刀を敵の咽喉に突き刺そうとする。相手もまた手足をもがき、死からまぬがれようと必死になっている。レオナルドがこれら兵士たちの服装を描くのに示した描写力については、言葉を弄する必要がないほどである。兜や他の装身具は実に変化をきわめている。また馬の形態や輪郭において彼が示した熟達ぶりは信じられないほどで、その筋肉の立派さ、洗練された美しさなど、レオナルドに優る画家はいない。」以上で、レオナルド・ダ・ヴィンチに関する記述を終えますが、彼はルネサンス美術の巨匠であるばかりではなく、科学や医学を初めとするあらゆる分野での革新的なアイデアを持った天才であったことは疑う余地もありません。