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ギュンター・グラス追悼
ドイツ人作家で画家のギュンター・グラスは、自分が滞欧中に知り得た巨匠です。直接ご本人にお会いする機会はありませんでしたが、作品としては映画「ブリキの太鼓」を観て、さらに自分の帰国後にエッチングによる版画展を西武美術館に見に行って、その生々しさのある表現に接しました。今でも頭にあるのは、映画「ブリキの太鼓」で、何かの臓物の中から鰻のようなモノが現れたり、主人公の子どもが叫ぶと周囲の建物のガラス窓が砕け散ったりという不思議な画像です。主人公オスカルは3歳で成長を拒み、その視点からナチス勃興から戦後に至るまでを描いていく物語で、その奇抜な発想に驚かされます。初めて観た印象は超現実的なイメージが交差する奇妙な映画として頭に刻まれました。解説によれば社会的偽善が剥がされることをねらいとしているようですが、現実的ではない部分が妙にリアルだったことが思い出されます。そのギュンター・グラスが亡くなったニュースが入ってきて、エッチングの超現実的でリアルな世界が好きだった自分は残念に思いました。今後まとまった遺作展や作品集が出るのでしょうか。最近、横浜のミニシアターで「ブリキの太鼓」を上映していたことが思い出されます。再上映はあるのでしょうか。もう一度「ブリキの太鼓」を観てみたいと思っています。