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版画家水船六洲について
町田市立国際版画美術館で開催されている「版画の青春」展の展示作品の中に、版画家水船六洲の作品が数多く展示されていることがわかり、それが契機になって私は同展に足を運びました。私が水船六洲の作品を知ったのは20代の頃、版画の専門雑誌からで、それは斬新で抽象的な作風でした。前衛的な書を見るような趣もあって、その構成に忽ち惹かれました。オリジナルに接したのは銀座の老舗画廊で、意外に大きな作品だったのと、版画とは思えない厚手の色彩が摺りこまれていたのが印象に残りました。これを木版画でどう作るのだろうと素朴な疑問がありました。2016年に横浜美術館で開催されていた「複数技術と美術家たち」展にも水船作品が展示されていて、私は暫くその前に佇んでいました。呉市立美術館の宮本真希子氏による作家研究レポートがあり、内容は彫刻を中心にした論考でしたが、版画作品にも触れた箇所があり、水船作品の「背後に一種の諦観」を見取り「呉での少年時代に親しんだ海辺の生物や漂流物」が抽象の構成要素になっていると述べられていました。私自身失われていくモノの哀れさは水船作品の作風から感じられませんが、瑞々しく深い詩情を湛えた画面は理解しています。「版画の青春」展の出品作品は水船六洲の初期のものだろうと思われ、具象的な人物像などを木版画にしていました。その中に「ピエタ」や「天使ガブリエル」を版画にしていたので、水船六洲はキリスト教信者だったのでしょうか。横浜の学校法人「関東学院」に美術科教員として勤めていたことも信者と関係があったのでしょうか。最終的に関東学院小学校の校長職に就いた水船六洲でしたが、私も高校は関東学院で学んでいます。おまけに私も市立中学校の校長職にあり、しかも彫刻をやっていたことで、見ず知らずの作家なのに、私は勝手な親近感を抱いているのです。因みに私は関東学院の六浦校出身で、蛇足ですが同期の俳優竹中直人君もそこに学んでいます。