Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

創作を補うメモ
陶彫部品による集合彫刻を作り続ける上で、私は自分なりのメモを用意しています。イメージされたものを具現化するために思索を深めていくのとは異なり、もっと感覚的に綴ったコトバによるメモです。それは創作の本流をいくものではありません。鑑賞者を自分のコンセプトに導くために謎を仕掛けているようなもので、造形の帰結点を覆い隠す役目をしているのです。鑑賞する側からすれば余計なことかも知れませんが、それも遊びの要素として捉えていただければ幸いです。ホームページでメモの内容を明らかにするのは躊躇されるところですが、とくに隠すことではないので書いてみようと思います。まず第一に「作品は完成形をもたないこと」です。私の作品は集合彫刻であるため部品の増減があります。展示する空間によって作品は変貌します。部品を一部自由に組み合わせられるように作っているのです。次に「作品は欠如していること」です。私は左右対称等に見られる完成された美が好きではありません。何かが欠如しているとそこに大きな広がりを感じ、鑑賞者個々の空想による補いを歓迎します。さらに「作品は非対象であること」です。カンディンスキーの絵画は非対象絵画と呼ばれています。何が描かれているのか説明ができないもので、それによって対象物ではなく色彩や構成が見えてくるのです。私の作品も「~のような」と形容される場合が多くあります。最後に「作品は制御できる部分と制御できない部分が混在していること」です。全て自分がコントロールできるものなら、作品世界は常に手の内にあって、退屈なものになるのではないかと思っています。偶然が生み出す想定外の造形を取り込んでいくことで作品のスケールが大きくなると思っています。こうしてメモを書いていくとどれも判然としないものばかりですが、私にはその方がしっくりいきます。前述した通りこれは造形の本流でもコンセプトでもありません。あくまでも創作を補う自分なりのメモです。ただし日々の制作には欠かせないものでもあります。