Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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新旧の「孤独なる彫刻」について
先月、平塚市美術館で開催されていた「柳原義達展」の会場で図録代わりに購入した「孤独なる彫刻」は、1985年に発行された同名の「孤独なる彫刻」があります。言わば新旧の書籍があって、どちらも彫刻家本人の著作になります。1985年初版の書籍は立派な箱に入っていて、ずっと以前から私の手元にあり、彫刻家本人のサインと掌を象った線がついていました。発行元は筑摩書房で2600円でした。これをいつ頃、私が手に入れたものか忘れてしまいましたが、1985年は私がヨーロッパから帰国した年に当たるため、あるいはその頃に手に入れて読んだものかもしれません。そうだとしたら本書に収まっていた海外の彫刻家論評を、私は夢中になって読んでいたのかも知れず、昨年初版になった新装の書籍を読み始めると、俄かに思い出す部分もありました。彫刻は大地に立つものであり、螺旋を描いて上へ向かうというフレーズが私の頭に摺り込まれていたのは、本書の初めに出てくるロダンの論評から受けたコトバである可能性を否定できません。新旧の収蔵論文を比較すると、旧書籍には「ジェルメーヌ・リシェ」「彫刻家の素描十選」「香月泰男」「高山辰雄」があり、新書籍にはそれがありません。その代わり新書籍には「無題(現代彫刻10人展図録より)」「生命の動勢《ブージェ》」「孤独な芸術家・舟越」「孤独に生きる」「心の安らぎ大和」「対談 柳原義達vs矢内原伊作」が収められています。私は「孤独なる彫刻」(柳原義達著 アルテヴァン刊)を論文によっては再読、または新しく仕入れる知識として読んでいこうと思います。現在は東京銀座で私の個展開催中なので銀座までの電車に揺られながら、改めて彫刻について考える機会にしたいと思っています。