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週末 TVドラマ「無言館」雑感
昨晩、何気なく見ていたテレビ番組で興味のあるドラマをやっていました。日本テレビの特別番組を通常なら私は見ていませんが、昨晩のテレビに映し出された女性の裸体画はどこかで見覚えがありました。こうしたスペシャルドラマは、感動の押しつけがあり、ましてやジャニーズが主演しているとあれば、自分の性に合わないものと決めつけていました。それでも昨晩のドラマに目が留まったのは、内容が戦没画学生慰霊美術館「無言館」を扱ったものであったからです。「無言館」は経営者の窪島誠一郎氏に協力した画家野見山暁冶氏の随想により、その存在を知り、過去2回にわたって私は長野県の「無言館」を訪ねているのです。これはドキュメンタリーではありませんが、絵画の収集に関しては実話であり、窪島氏を演じた浅野忠信さんや野見山氏を演じた寺尾聰さんが、秀逸な演技で人物像を際立たせていたのではないかと、私は察しています。遺族の無念や戦没した学生に対する愛慕も見事に描かれていて、ベテラン俳優陣の面目躍如とした演技が光りました。私も美術学校で学んだ学生として、時代が時代なら展示に値しない未熟な作品を残して旅立ったかも知れず、「無言館」を訪れたときは、何ともやりきれない思いに苛まれました。2回目に訪れたときは、前回より気持ちは少し落ち着いていましたが、戦争に向う学生がどんな思いで作品を作っていたのか、どうしてこんな静かな世界を粛々と描けたのか、その境地にならなければ分からないところが今でもあります。私は戦後の平和な時代に生まれ、今も命が尽きることもなく創作活動を続けています。この平和というのが決して通常のことではなく、先人たちの克服なくして成し得なかったものであることが、世界の情勢を見ればよく分かります。戦争が奪った多くの犠牲、そして若くして散った命が語る数々の遺作における無垢な魂。「無言館」は無言であるが故に、私たちはそこで多くの啓示を受けるのです。