Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 師匠と久しぶりの会話
日曜日になりました。今日も朝から工房に籠って制作三昧でした。午後4時に制作を終えて自宅に帰ってくると、彫刻家の師匠から電話がありました。師匠の池田宗弘先生は長野県筑摩群麻績村に住居兼工房を構えていて、現在は一人暮らしです。年齢は84歳。私が大学で師事していた頃は、東京都東村山市秋津町に住居兼工房があって、私は幾度となく師匠宅にお邪魔していました。その頃のご自宅は師匠自身で建てたものらしく、漆喰の壁に真鍮直付けのレリーフが所狭しと立てかけられ、また雑木の茂る庭には同じ真鍮直付けの、あたかもジャコメッティのような細長い彫刻が数体置かれていました。奥様が手料理でもてなしてくれたことが印象に残っています。現在住んでおられる麻績村にはもう20年以上になるのか、初めの頃は奥様がまだご存命で仲睦まじく暮らしていたように思います。麻績村の住居「エルミタ」は師匠の世界観を表した教会のような造りになっていて、実際にキリスト教に纏わる天井画を制作されています。師匠は創作に生涯を賭けていて、学生だった私にもその頃から彫刻魂の片鱗を覗かせていました。今日は久しぶりの師匠の声を聞いて、思わず長電話になり、老齢とは思えないハリのある声に私は勇気をもらいました。私の近況の話で、師匠にも元気を与えられたのではないかと勝手に察しています。私が山奥に一人でいる師匠を心配するのと同じくらい、師匠は私を心配してくれているのには驚きます。というのも会社を退職した人が、認知症になったり、亡くなったりしたのが師匠の周囲であったらしく、私も2年前に退職したので、その心身の変化を師匠は心配してくれていたのでした。確かに校長職と彫刻家の二束の草鞋生活は激務でしたが、彫刻があったために私は変わらず前向きでいられるので、これは20歳の頃、厳しい言葉で私を指導してくれた師匠のおかげだと伝えました。師匠と話をしていると、私はあの頃の私に戻っていきます。初心忘れるべからず、という言葉が頭の中で再三甦り、明日からの活力を与えてくれているように感じました。