Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 空間変容の再確認
週末は創作活動のことについて書いていきます。先日、千葉県の美術館で見た「カール・アンドレ」展で、彼が造形として主張したミニマル・アートの主旨はさておき、私自身が展覧会場で感じたことを踏まえて、彫刻の在り方を取り上げてみたいと思います。これは私の個人的な感覚に頼った文章であることを予め断っておきます。アンドレの作品群が点在する広い部屋で、私はそれらを見渡し、素材の集積が周囲の空間に与えている影響を考えていました。作品と言っても、アンドレの場合は木や金属といった素材そのもので、それを彫り刻むような造形は皆無です。私が彫刻を学び始めた頃は、習作として人体塑造をやっていて、周囲の空間を意識することはありませんでした。彫刻は空間芸術であると認識したのはずっと後になってからで、空間に何か物質が置かれると、そこの空気が変わり、それを鑑賞する側が認知して空間を味わうのだと理解しました。雑駁なことで言えば、都市の中に新しい建造物が建つと周囲の雰囲気が変わるし、インテリアでも何を置くかで室内が変わります。彫刻にも空間変容の刺激剤としての役割があると私は考えます。私見として、彫刻に全体的な造形要素が付与されていると、それを取り巻く空間が小さくなるように私には思えます。さらに工芸的要素があると、その巧拙に目がいってしまって周囲の空間を感じられなくなるというものです。具象傾向の作品にそれが顕著だろうと考えます。つまり造形の対象は何か、どう作られているか、そこに鑑賞者の興味が移ってしまい、全体の空間を感じ取ることが希薄になるのです。私はアンドレのように素材を突き放すことができませんが、それでも空間を見せたい場合はどうすればよいか、造形を最小限にしてみるべきか、陶彫のもつ素材の存在感は充分にあるはずで、錆鉄のような鎧を纏った陶彫を、空間変容最大の武器にしたいと私は考えているのです。どこまで作り、どこを余白として残すか、細工ではなく、場としての空間を考える時に、私の造形は漸く空間が変容する芸術に到達すると思っています。