Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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F・ステラ「ブラック・シリーズ」について
先日行った千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館に、フランク・ステラの初期作品である「ブラック・シリーズ」が、部屋全体を使って複数展示されており、私はまとまった作品群が見られて興奮していました。それは「カール・アンドレ」展に合わせて展示されていたもので、ミニマル・アーティストの交流関係を示唆する演出でしたが、私は唐突にステラを見られて得をした気分になりました。ステラの作品はシンメトリカルな色面構成によってアメリカでは有名でしたが、その後は平面の枠を超え炸裂する立体造形になっていきました。私が好きだったのは初期の作品で、まさに「ブラック・シリーズ」だったのです。それは平面に描かれた幾何形体を等間隔のストライプによって構成しています。まさに幾何抽象作品を見た時のすっきりとした爽快感を伴って、私に安定した気分を齎せてくれます。しかし、私の注目はそれだけではありません。等間隔のストライプは、上から線を引いたものではなく、線状に画面の下地を残しているのです。そうした線なので、よく見ると平面を塗って線状を残したところに微妙なムラがあり、そこに私は不思議な奥行きを感じてしまうのです。丁寧に真っ直ぐに線以外の平面を塗ったところでも手仕事の痕跡が出てしまい、それをわざわざ全体的な抽象形態にしていることが抑制された情欲にも似て、これは私個人に限ったことではあるかもしれませんが、愛おしさも感じてしまうのです。自作のRECORDにも同じものがあります。ステラのような徹底したストライプではないのですが、平面を塗って線状を残すところが一緒だと気づいて嬉しくなりました。妙なところに惹かれる私ですが、「ブラック・シリーズ」の鑑賞方法としてお勧めではないかと思っています。