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京橋の「ブランクーシ展」
昨日、京橋にあるアーティゾン美術館で開催されている「ブランクーシ展」に行ってきました。コンスタンティン・ブランクーシ(1876ー1957)は、ルーマニア生まれの彫刻家で、後にフランス国籍を取得しています。ブランクーシはロダンの工房で下彫り工として働いたけれど、すぐ辞去しています。ロダンの塑造による表現や大理石の分業システムに反発し、作家が単独で素材から直に形を彫り出す方法を選ぶようになりました。それに伴い形態も単純化に進みました。展覧会場には初期の頃の具象作品があって、ブランクーシもまず塑造から始めた造形履歴が分かりました。しかし素材を直彫りするようになると、ブランクーシの特徴が現われてきます。図録に「これら木や石を用いた試みにおいて、作家の意が、材にそなわる質感や色味を活かした仕上げに注がれていたことは明らかである。同時期の他の作家による直彫りの作品は、面の連続する造形によって素材の硬質な性質を強調したり、彩色がなされるなど、表現主義的な性格を帯びたものが多いことを踏まえると、素材とフォルムの最高度の調和を追求するブランクーシのアプローチは異質である。」とありました。また私が注目したのは、彫刻に必要だった従来型の台座を止めたブランクーシの造形における台座の意味でした。「彫刻の『移動可能』性は、作品を下支えするという副次的な役割から台座を開放することになる。それは、彫刻と台座との主従関係、ヒエラルキーが可変的なものになるということで、極端な例としては《カリアティッド》や《無限柱》にみられるように、従来の概念なら台座に属するであろうものが彫刻として作品化されることになる。」(引用は全て島本英明著)展覧会場ではその実践と呼ぶべき作品があって、私は旧知でありながら改めて感銘を受けたのでした。ブランクーシが追求した革新性はこれに留まらず、自身のアトリエの状況や自ら撮影した彫刻写真など、まだ書き足りないことがあります。別稿を起こして次の機会に述べたいと思います。