Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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渋谷の「ボテロ展」
昨日、東京渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催している「ボテロ展」に行って来ました。ボテロ生誕90歳を記念して開催されている本展は、現在も生きて活躍する芸術家の中で、ボテロは最長老の巨匠であり、その長年の成果を展示している展覧会なのです。ボテロの世界観は一目で分かるもので、人物も静物も太っています。画面も大きく素描といえども油絵と同じ大きさがあり、あらゆる技法の作品が70点も居並ぶ展示風景はまさに壮観でした。図録にはボテロ本人によるメッセージが掲載されていました。「芸術が普遍的な価値をもつためには、まず地域的、個別的な価値をもたなければならないーこれは私の持論です。画家として歩み始めた頃から、私は自分のルーツ、出自、そして故郷であるコロンビアのメデジンで過ごした子ども時代の現実を、自分の創作活動の主題にしたいと考えてきました。私が描く日常は、記憶に刻まれた田舎の風景です。ただし、私はこの風景を写実的にではなく、ボリュームを強調した世界として描きます。そこでは、あらゆるものが同じ意図と意思をもって描かれます。つまり、ボリュームを表現することで、芸術的な美を表現することを目指しているのです。ボリュームと官能性に対する私のこだわりは、最も初期の作品にも見られ、例えば今回の展示にも含まれる水彩画《泣く女》は17歳のときの作品です。」(ボテロ著)図録には絵画の解説がありましたが、これもボテロが到達した世界観に対するこだわりでした。「1956年、穴があまりに小さくて楽器がずんぐりとして見えるマンドリンの静物画のシリーズで、ボテロはデフォルメ、つまり『形態の高ぶり』の法則を理性的に捉え、これが円熟期の彼の作品の堂々たる効果を決定づけた。静物画が他の絵画ジャンルよりも際立って形式的な探究に適しているのは、その名が示すとおり動かない具象的要素を問題としているからだ。探究していくにあたり、行為や人物の動き、あるいは物語に邪魔されることがない。」(C・ブラスキ著)もちろんボテロの広がる世界は、静物画に留まらず信仰の世界、ラテンアメリカの世界、サーカス、変容する名画に至るまで、どの分野も絵画はボテロそのものでした。名画のボテロ流再現で、私はピエロ・デラ・フランチェスカの「ウルビーノ公夫妻の肖像」に面白味を感じました。これはひときわ大きな画面に男女の横顔が描かれた絵画で、べた塗りで表現した比類ない作品になっていました。これを見ただけでも「ボテロ展」に来てよかったと思いました。