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鎌倉の「山下菊二展」
絵画表現を媒体にして、政治や社会問題に対して発言する故・山下菊二。かなり以前に「人人展」という大きなグループ展で山下作品を見た記憶があります。人間をモチーフにした個性的な画家が集まった会でした。現在、神奈川県立近代美術館鎌倉別館で「山下菊二コラージュ展」が開催されています。出品作の中でとくに圧巻なのは戦争と狭山差別裁判をテーマにしたシリーズです。コラージュをいう切り抜き技法を用いて、描く行為とは異なる世界観を持った作品群です。「写真は私の介在しない映像である。コラージュはそれをつなげ、ものとものとの関係で思想を表現する。言葉による伝達と同じように、一目拒否する前に、ある一歩をおいてみてくれるのではないかと思う。コラージュは私の思想を表現し、伝達する有力な媒体である。」(図録より抜粋)山下菊二は、社会の枠の中に閉じ込めて自由を束縛する制度に対し、絵画表現を持って抵抗した思想家とも言えます。最近では社会性を持った作品を見る機会が減ってきたと感じています。時代が求めるものが変わってきたように思うのですが、情報社会といわれる現代社会にあって、むしろ巧妙に管理される体制ができていて、私たちがそれに対し警戒心が薄れているのかもしれないと感じているこの頃です。