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青木繁 夭逝の天才画家
先日、東京ブリジストン美術館で開催中の「青木繁展」に行きました。青木繁は我が国の近代美術史に「海の幸」や「わだつみのいろこの宮」によって名を残した夭逝の画家です。28歳の若さで急逝した青木は、没後友人たちの力によって画業を世に留めた画家でした。「当時僕は歴山大帝(アレキサンダー大王)を崇拝して居たので、あのやうな男子にならねばならぬ、しかし今日では軍人となったところで、一の戦争を業とする人間で、到底歴山大帝の心事は実現し得べきものではないといふことを考へた。(中略)この時に考へて見たのが、哲学であり宗教であり文学であったが、最後に来つたものは芸術であった、それと同時にその実行であった。(以下略)」という青木の言葉が示す通り、美術学校では、師であった黒田精輝が才能を認めつつも青木の不遜な態度に手を焼くありさまだったようです。日本神話をテーマとした青木の絵はやがて認められ、「海の幸」等の代表作が生み出されていくのですが、まさに夭逝の天才画家として青木は草分けだったのかもしれません。その後も我が国の美術史では多くの夭逝した画家が登場してきますが、生き急いだ表現に見られるほとばしる筆致は、夭逝の画家に共通した雰囲気を感じさせます。短く燃えた画業。命を削りながら創り上げた未完ともとれる表現が、恒久なるものを刻んでいると私には感じとれます。