Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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東京白金台の「機能と装飾のポリフォニー」展
先日、東京白金台にある東京都庭園美術館に行って、「機能と装飾のポリフォニー」と題された展覧会を見てきました。本展に出品されている作品は、家具や工芸、服飾といったもので1900年代から第二次世界大戦までの、モダニズムと呼ばれ、当時としては時代の先端をゆくものでした。私は個人的にはこれらアール・デコと称された建築や日用雑貨が大好きで、前時代の装飾的な傾向と新時代の機能的な傾向が鬩ぎ合っていた状況を、興味関心を持って眺めている者の一人です。図録にこんな箇所がありました。「本展覧会で強調したいのは、対立構造にあるかのように描きだされてきた機能/装飾、モダニズム/モダニティの概念が、近代(そしてポストモダン以降の現在)を駆動させる両輪として、密接な関係性の上に成り立っていたことである。実際、常に変化・更新するからこそ、私たちは消費し続けるのであり、更新がもはや純化ではなく、装飾の変更と言い換え可能であることに気づいている人も多いことだろう。~略~当時の総合芸術の代表ともいえるウィーン工房とバウハウスを軸に、それ自体が含んでいた周縁的活動とその外部で関係を持った動向に着目する。また享楽的な芸術の象徴とされる1925年のフランスのアール・デコ博(現代産業装飾芸術国際博覧会)を一つの指標にしながら、ファッションおよび博覧会から溢れでたいくつかの現象を取り上げる。そしてそれらへの応答として日本の動向にも目を向けたいと思う。」確かに展示作品は多義にわたっていて、20世紀初頭のヨーロッパ文化を網羅しているように思いました。本展の新館にはバウハウスのまとまった展示があって、その機能性に秀でたデザインを堪能しました。「私たちはバウハウスと聞くと、おおよそ機能主義的なプロダクトデザインや建築を思い浮かべてしまうが、一方で近年見直されているのが女子学生たちが担った織物工房の活動である。そこで自主的・主体的に織物に取り組んだ作家たちの理論的支柱となったのが、設立当初のバウハウスの基礎を作り、自らもテキスタイル制作に携っていたヨハネス・イッテンであり、その後1923年から27年にかけて夏期講習を担当し、31年の辞職まで同工房に関わったとされるパウル・クレーであった。」(引用は全て千葉真智子著)本展には染織作品の展示も多く、当時としては革新的なデザインを配していたと思われます。アール・デコ様式の東京都庭園美術館で見るウィーン工房とバウハウスの作品は、その雰囲気からしてフィットした情緒を醸し出していて、前時代のヨーロッパにいるような錯覚を覚えました。個々の作品に関しては別稿を起こします。