Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 秋の気配が立ち込めて…
日曜日は後輩の彫刻家がやってきて制作をしています。彼は野外工房を使って石彫をやっています。木から石に素材を変えて挑戦する姿勢は、なかなか立派なものです。私は陶彫一辺倒なので、相変わらずの制作工程でやっていますが、同じサイズの陶彫立方体を日々作っていても、全て彫り込み加飾が異なるため、飽きることはありません。10月に入った途端、秋の気配が立ち込めて創作活動には絶好の季節になりました。湿気がなくなり、温度も肌に心地よくなると、創作に関する考えが巡ります。芸術の秋とはよく言ったもので、まさに今がその時だなぁと思っています。芸術や美に対する概念はヨーロッパが発祥です。美しいものや麗しいものを感じる心は古代から日本人にもあったはずですが、それを論理的に確立したのはヨーロッパで、日本には明治時代に入ってきました。ヨーロッパがそうした概念に至ったのは気候風土と関係があると思います。既読した「風土」(和辻哲郎著 岩波書店)によれば、ヨーロッパの風土は自然が人間に従順で、しかも気候的に湿度が低く、言うなれば牧場のようだと結論づけていましたが、そうした風土の中だからこそ思考を哲学として昇華出来たのではないか、さらにそこから芸術の概念が生まれたと私は考えます。そこまで大きく捉えなくても、秋の気配が立ち込めた工房にいると、自分が何のために陶彫の表面を削っているのか、そこに意味を見出す思考が頭を過ります。これは芸術に対する思索です。私の場合はまず感覚ありきで、そこに構成や配分といった計算が入ります。先日見て来た「キュビズム展」で印象づけた構成や配分がここで参考になっていると実感しています。ただし、ヨーロッパと違い、日本では芸術を考えるに相応しい季節はすぐに過ぎ去ってしまい、やがて思考が停滞する冬がやってきます。明日も自らの芸術行為を裏付ける考えを述べてみたいと思っています。秋だからこそ、と思いつつ今の状況を大切にしたいと考えているのです。