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鎌倉の「イメージと記号」展
昨日、鎌倉にある神奈川県立近代美術館鎌倉別館で開催中の「イメージと記号」展に行ってきました。学芸員によるテーマに従って、収蔵作品を集めた企画なので、本展では大掛かりな宣伝をすることもなく、図録も用意していないのですが、私個人としては、自分の若い頃を振り返る良い機会になり、また日本の戦後に興った前衛を見つめ直すことになりました。本展のパンフレットに掲載された文章を引用いたします。「新たに登場したのが、記号や幾何学を取り入れた理知的な美術の動向で、視覚を惑わすだまし絵のような表現や、量産されたマルチプル・オブジェが流行します。それは『見る』ことによって成りたつ美術の制度を問いかけ、作品のオリジナリティ(真性)を見直そうとするものでした。」本展の中で、私が一番惹かれたのは「S/P 後から来るC」という作品でした。これは若林奮ワールドと言える作品で、私が学んでいた大学の教壇に立っていた若林先生は、今でも私の造形に影響を及ぼしています。当時から先生の講義を聞いても私には理解できず、カタチをどう人が捉えるか、空間をどう理解するか、極めて個人的な哲学がそこにあるように思っています。大きなテーブル彫刻である「S/P 後から来るC」は、タイトルこそよく分かりませんが、表現したいものはテーブルの下面の造形にあるように思えました。テーブルの上面は板を張り合わせた木材と鉄板で、下を除くと下面に木材や鉄による突起物が多く接合されていて、主張はそこにあって、逆さまになって豊かな空間を形成しているように感じました。私もテーブル彫刻を作っています。テーブルを大地に見立てて、その下面には地中に埋もれた造形が存在しているというのが「発掘シリーズ」ですが、若林先生の造形はそう短絡的ではないように思えます。彫刻を下から覗くという視点も考慮しているのかもしれません。「イメージと記号」展は、昭和の時代に美術概念を問いかけた芸術家たちが、今も輝きを失わずに斬新な造形を提示している展覧会だと私は考えています。