Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

週末 擬古物陶製彫刻について
週末は自らの創作活動である陶彫制作について書くことにしています。表題の擬古物陶製彫刻というのは、現在読んでいる「一期は夢よ 鴨居玲」(日動出版)の著者瀧悌三氏が、私の作品を評して名付けた語句です。私の作品が「発掘シリーズ」として、古代遺跡の発掘現場を表現していることに因んで、ある新聞記事の美術評壇に書いていただいたものです。擬古物陶製彫刻とは、古物に似ているという意味で、古物を模倣したものではありません。私は若い頃に僅かばかりの貯蓄を費やして、バスを乗り継いで、当時住んでいたオーストリアのウィーンからトルコやギリシャへ旅立ちました。ウィーンの美術学校を中途で辞め、日本へ帰国する前にヨーロッパ文明の発祥の地を見ておこうと思ったのでした。それはエーゲ海沿岸に広がる古代遺跡を巡る旅でした。ほぼ2ヶ月をかけて、時にはヒッチハイクをして沿岸の遺跡を丁寧に回りました。2ヶ月の間には発熱が続いたり、慣れない食事に辟易したりしましたが、日々スケッチや写真に収めていて、それは心に刻む有意義な旅だったと回想しています。そこで見た風景は「発掘シリーズ」に結実しましたが、数十年継続するシリーズにおけるイメージの枯渇を恐れて、シリーズの途中から東南アジアの世界遺産に触れたり、世界に点在する古代の文様や建造物を参考にして、自分なりに展開を進めてきました。しかも私は出土品らしいものを造形したことは一度もなく、寧ろ陶土に古色の風合いを齎せた工夫をして現代的な形態を作ってきたのです。私の発想は作品を設置する床を大地に見立てて、そこから立ち上がる形態を集合体で表すものです。それが架空都市のようになり、発掘というシリーズに繋がっているのです。陶が古色の風合いをしているので、擬古物と言われる由縁ですが、あくまでも古物を模倣したものではないことを付け加えておきます。