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若林奮「Dog Field」展
多摩美術大学美術館で開催されている故若林奮先生の「Dog Field」展は、彫刻数点と多くのドローイングによって構成された個展です。自分は昔から若林先生の個展であれば必ず見に行っていました。若林先生を「先生」と呼ぶのは、自分の学生時代に若林先生が大学の彫刻科で教壇に立っていられたからですが、残念ながら自分とはあまり縁がなく、いつも遠巻きに先生の作品を鑑賞し、また先生が言われるコトバを熱心に聞き入る機会を持っただけでした。作品は難解極まりないと今でも思っていますが、作品が醸し出す何とも言えない魅力が、理屈抜きで自分を虜にしているのです。先生の文章を読むと、作品が意図するところはある程度理解できますし、何を求めていたかもわかります。ところがこの展覧会に同伴した家内の反応はとてもダイレクトでした。「この人は生前ずっと悩み苦しんでいたんではないか。この人なりのカタチで空間を捉えようと、もがいていたのがわかる。だから作品は完成されることがなく、ともかく現状を表現するしかなかったように思う。じっと作品を見ていると何だか涙が出てきそう。」家内は若林ワールドのことはわかりませんし著書も読んだことがありません。それでもこの感想に自分は参ってしまいました。理論に頼る自分と直感でものを言う家内。若林ワールドは決して難解なのではなく、全身全霊をもって素直に作品に接すれば、作者の方から歩み寄ってくるということに気づかされた貴重なひと時になりました。