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人体塑造からの転位 Ⅱ
先日のブログ「人体塑造からの転位」の続きです。現在自分の彫刻作品は、ロシア人画家カンディンスキーが提唱した非対象という意味で言えば非対象でも抽象でもありません。形態の基本となる要素を抽出している点では、確かに抽象化をしているのですが、自分のイメージでは具象的な世界を描いているのです。造形する対象が人体から他のモチーフに転位したというのが正確なところだと思います。自分の学生時代は人体塑造に明け暮れていましたが、海外に出かけていったことが契機になって方向が変わりました。それでもウィーン美術アカデミーに学んでいた最初の頃は人体塑造を作っていました。ウィーンは街中にバロック彫刻があふれ、自分が作っている人体が少なくても日本より自然な状態で存在していることに伝統の重みを感じていました。逆に日本人なのに何故西洋の伝統表現をやっているのか、自分にはギリシャやルネサンス以来脈々と続く人体表現をやる必然性があるのかを考え始め、その時からウィーンでの試行錯誤が始まったと言っても過言ではありません。それが彫刻を通して自分自身と向き合った第一歩だったと述懐しています。