Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 素材を伴うイメージ
日曜日には後輩の彫刻家が工房にやってきて、自らの制作に取り組んでいます。彼は木彫、私は陶彫をやっていて、お互い集中しながら同じ時間帯を過ごしています。私は今日は梱包作業は休んで、新作の陶彫立方体を作っていました。この作品は1年間365点の立方体を使い、全体で空間演出をして、場としての世界観を描いていくものです。そのイメージは陶という素材を媒体として成り立つのです。私の場合は常に素材ありきで考えていて、とりわけ陶があってイメージされるものだけが頭にあります。陶は扱いにくい素材だなぁとつくづく実感していますが、高温によって石化していく過程が、私にとって魅力的なのです。陶は焼成される過程で、微妙に歪んだり、時に罅割れが生じます。これを防ぐために成形や彫り込み加飾で工夫をしていきますが、正確な立方体を作るのには少々無理があります。もっとも正確な幾何形体を作るなら金属か石材を選びます。陶彫は微妙な歪みを受け入れていくことと、それを差っ引いても陶という素材に拘るだけの魅力があると、私は思っております。発掘現場から発見された土器や土偶には、土臭い造形だけがもつ素朴で始源的なパワーを感じるのは私だけではないはずです。土は私たちに最も馴染のある素材だからです。文明の曙期に人類は、土に呪術的な魂を感じ取り、宗教性のある造形物を生みだしました。同時に器を作り日常品として愛用してきました。現代は発達した工業生産により新たな素材開発が進んできました。実材を離れてバーチャルな世界も手に入れてきましたが、私は文明の曙期に、人類が最初に手に取ったであろう土に、相変わらず魅せられているのです。制作方法は土偶と同じです。電動ロクロは使わず、手びねりで現代の造形に挑んでいるとも言えます。そうしていると私は妙に元気になれるのです。またこれから1週間、土に親しんだ創作活動をやっていきます。