Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 陶土に合わせて…
日曜日になり、今日も工房に朝から出かけて陶彫制作に邁進していました。毎日体温並みの暑さが続く中で、休みなく陶彫制作を続ける理由を改めて考えてみました。創作活動に対する意欲だけでは、この酷暑と言う悪条件の中で、理由として掲げるのは正直ではありません。今日は後輩の彫刻家が工房に来ていて、熱心に自らの制作をやっていましたが、昼食時間に後輩に向けて自分から出た言葉に、酷暑の中でも制作を続ける本当の理由があったなぁと私は気づきました。それは以前NOTE(ブログ)に書いたことがあることで、私自身は再確認をしたのでした。私は海外生活を打ち切って30歳の時に帰国しました。人の勧めもあって教員採用試験を受けて、教員と彫刻家の二束の草鞋生活をスタートさせたわけですが、多忙な教師と自由気儘な彫刻家では、彫刻作品など作っていく時間などまったくないため、創作活動に対する意欲は失せていきました。海外では日本の陶芸の土質を生かした表現に感動し、しかも造形イメージが湧きあがっていたものの、なかなか着手できないもどかしさに自己嫌悪に陥っていました。そこで陶芸をやっている同級生を頼って、陶土や釉薬のことを学び、何とか自己流で陶芸を始めました。陶芸を始めて気づいたことがありました。彫刻の素材として一般的な木材や石材はいつまでも放置していても造形は可能ですが、陶土は放置すると例えビニール等で保水処理していても乾燥が進んで成形ができなくなります。どんな方法でアプローチしても、陶土は放っておくことが出来ない、つまり、自分の都合ではなく、陶土の都合で制作をしなければならないのです。これは二足の草鞋生活には有効でした。どんなに教職が多忙であっても、陶土の面倒を見なければならないし、常に気にしていなければ手間をかけて土練りしたことが無駄になるのです。成形した後も、文様を彫り込むのは適度な硬さにならなければならないし、最終的な窯入れも作品が焼成可能な状態になっていなければ、窯内で割れてしまうのです。制作工程が進む度、常に失敗との隣り合わせが続き、実際若い頃は失敗続きの毎日でした。陶土に合わせて生きてきた創作活動生活は、酷暑であっても休むことができないのです。1週間ほど休暇を取る場合は、陶土の世話をしっかりしておかなければならず、校長時代の夏休みは、そうして海外旅行をしていた記憶が甦ります。