Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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上野の「キュビズム展」
先日、東京上野にある国立西洋美術館で開催中の「キュビズム展」に行ってきました。20世紀美術史の潮流の中では有名なキュビズムですが、私自身はキュビズムの芸術家の持つ構成要素に興味関心があり、その作品を堪能してきました。そもそもキュビズムとは何か、図録より拾ってみたいと思います。「キュビズムという『芸術の大革命』は、1907-1908年から1914年のあいだに、ブラックとピカソという二人の芸術家が互いに協力しながら、理論よりも経験に基づいて、反・具象的ではあるが抽象的ではない新たな造形言語を生み出したことから始まる。彼らはほとんど相反するふたつの段階を経て、新しい絵画空間を作りあげた。最初の段階では現実を模倣する均質な形態が完全に放棄され、カットグラスのような断面によって分解された形態と背景の空間とを結びつける方法が追求されたが、それに続く段階では現実性の回復へと秤が傾き、イメージ解読の手がかりになるトロンプ=ルイユ(だまし絵)的要素(記号、数字、文字)が描き込まれ、やがて現実の物そのものが画面に取り入れられるようになる。」物そのものというのはコラージュのことを言っているのでしょうか。つまりこれが簡単に言うキュビズムの定義ですが、その発端となったプリミティヴ美術の受容の歴史がありました。「アフリカ美術の影響を受けた芸術家として、最初に思い浮かぶのはやはりピカソである。彼はアフリカ彫刻の象徴的意味については知識をもたないまま、アフリカ彫刻を愛好し、熱心に収集していた。~略~ピカソは1907年から1914年までのあいだ、さまざまなアフリカ彫刻の作例を目にして、その影響を彼自身の作品に反映させたが、それらの作品は彼がアフリカ彫刻の諸形態をひとつの概念に変換したことを明らかに示している。」(引用は全てブリジット・レアル著)展覧会場の入口にアフリカ彫刻があり、キュビズム作品の導入としては、その単純化と生命力に納得できるものがありました。私もアフリカの仮面を造形発想の基盤にしている時もあるので、畢竟するにキュビズムに惹かれる理由がそこにあるのだろうと思っています。展覧会場には、アフリカ彫刻から影響を受けたもう一人の画家モディリアーニの直彫りの立体作品があり、また幾つかの彫刻作品もありました。これに関してまた別稿を起こそうかと考えています。私の好みからすれば、会場を巡ってみて、質量ともに私の心に刺さる作品が多いと感じられる展覧会だったと思っています。