Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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師匠の彫刻&幕末の絵画鑑賞
今日は工房の作業を休んで、東京の六本木まで家内と出かけました。六本木には大きな美術館が2つあります。一つは国立新美術館で、もう一つはサントリー美術館です。国立新美術館で現在「自由美術展」が開催されていて、私の彫刻の師匠である池田宗弘先生が出品しています。池田先生はキリスト教に纏わる物語を真鍮直付けという技法で作っている彫刻家で、私が学生の頃から「自由美術展」に出品していました。今回の新作は真鍮作りの悪魔像が木彫りの人形を操っている作品で「悪魔よ去れ」という題名がありました。池田先生の「悪魔シリーズ」は世相を反映しているので、このところずっと継続しています。昨年はウクライナ侵攻のことを暗示した作品でしたが、今年も国際情勢は不安定なままなので連作になったようです。先生の風刺が効いた作品は、戯画的であったり、空間を巧みに使ったものであったりして、私をずっと刺激し続けています。高齢になった先生が少しでも永く創作に携われるように祈っております。次に私たちが向かったのはサントリー美術館で、昨日から「激動の時代 幕末明治の絵師たち」展が開催されていました。この展覧会は昨日の朝日新聞の記事で知りました。記事によると「長らく画壇の中心に君臨した狩野派にも変化が見られた。江戸時代の後半ごろから、伝統を守るだけでなく、浮世絵や琳派、西洋画法なども取り入れたのだ。門下からは、従来の狩野派とは異なる独創的な作品を手がける絵師も現れた。極彩色が鮮烈な狩野一信の『五百羅漢図』は、その変革を感じさせる象徴的な作品だ。陰影表現などに西洋の影響が見られる。」(神宮桃子著)とありました。会場入口に展示された「五百羅漢図」はかなりインパクトがあり、西洋から齎されたさまざまな技法が混在一体となりながらも、毒々しく見える表現に圧倒的な迫力がありました。この作品に限らず過渡期の混沌とした表現には、新しい表現を己の中に取り入れようと模索する絵師たちの弛まぬ努力が垣間見えて、時代が落ち着くまで暫し時間が必要なのだろうと察しました。それでもこの時代の絵師たちの探求姿勢は特筆に値すると感じました。詳しい感想は後日改めます。今揺れ動いている時代に風刺を効かせた池田先生の彫刻といい、幕末の激動の時代を力強く生きた絵師たちといい、今日は現時点を考える絶好の機会を与えられたようで、一向に癒されない疲労とともに、大変充実した時間を過ごすことが出来ました。